若さを保つ:その二
ステムセル
私が50年間患者を診療した結果、見つけた若さを保つ秘訣とは、
「食事、ホルモンレベル、抗酸化作用、」この三つが必須条件だと言うことです。なぜ、若さを保つために、この三つが必要なのか?
それを理解するためには基礎知識が必要です。
人の細胞は、細胞が分裂して維持されると思われていました。
テロメアという遺伝子の一部に細胞分裂の回数を決める部分があるので、寿命に限りがあるという理論でした。
ところが、最近そうじゃないと言うことが、分かって来ました。
人体の中にナチュラル・ステムセル(幹細胞)という新しい細胞になる種があると分かったのです。新しい細胞になる種が身体のいたるところにあるのです。アメリカ国立衛生研究所のデータに出た論文の一説にステムセルと抗酸化作用の関係を示す部分があるので紹介します。
「過去10年間に渡り、抗酸化物質が酸化ストレスを緩和し、ステムセル(幹細胞)の生存を改善するだけでなく、これら細胞の効力と分化にも影響を与えることがいくつかの研究で示唆されています。」
つまり、抗酸化作用が、新しい細胞になるステムセルをサポートするために不可欠だと分かってきたのです。
傷付いた細胞や古い細胞は分解されて廃棄され、ステムセル(幹細胞)と言う細胞の種が、新たに成長して新しい細胞になります。この新しい細胞を作ることが生命を支えています。
若さを保つには、自分の細胞を傷つけないこと、新しい細胞が必要な時に自分のステムセルが新しい細胞を作る。この二つが若さを保つことになります。
細胞を傷つけるとは、身体組織に炎症が起こることを言います。
炎症の原因はたくさんあります。
実は、多くの人が経験しているように、若い時は、細胞を傷つけながら強い体になる時期があります。スポーツをして細胞を傷つけ、筋肉に痛みが出て、疲労物質の乳酸が溜まって炎症が起こしますが、盛んな回復力で前より強くなります。ところが、スポーツをやりすぎたり、歳をとってからスポーツをすると、なかなか回復できない深刻な炎症が起こってしまいます。
疲れたと感じることは、すでに炎症が起こる前兆です。
風邪をひくと鼻、気管支、肺の炎症を起こします。
酒を飲みすぎると肝臓に炎症が起こります。タバコを吸うと肺細胞が死んでいきます。働きすぎて休まないことも、炎症の原因になります。汚染された環境で生活することも炎症の原因になります。生活習慣の不摂生が原因の炎症は深刻なダメージになります。これら毎日起こる炎症を放置すると、徐々に慢性炎症になります
慢性炎症に、やがて病気という名前が付けられます。病名とは、炎症が進行したということですが、病名がつくかなり前から炎症は体内を犯しています。
炎症が細胞を傷つける、これが若さを損なう最初の原因です。ですから、良い環境でゆっくり暮らすと長寿になります。
しかしながら、最高の環境でゆっくり暮らして、病気は避けられても、老化は避けられません。
その理由として、細胞自体に寿命があるのではないかと言う仮説がありました。
その仮説の一つがテロメアです。細胞の寿命には限りがあるという理論の根拠です。でも、これは、ネズミを使った実験で考えられた仮説です。
人間の場合、もっと複雑だと分かってきました。人間の場合、細胞の寿命が体の部位によって大きく違います。細胞が入れ替わる再生期間はさまざまです。
風邪を引いて熱が出ると、匂いを感じなくなり、味を感じられなくなります。粘膜細胞が壊れるからです。でも風邪が治ると細胞は再生されて復活します。体のあらゆる部位でそれぞれの期間で細胞再生が行われます。
今回のコロナ感染で、嗅覚や味覚を失って、それが長期間続く現象が起きました。日頃、働きすぎ、頑張りすぎた人は、細胞を再生するステムセルが減ってしまっていたからです。
人は体内に豊富なステムセルを持っているのに、それが活動しなくなる。これが慢性疲労であり、老化です。
たとえ、100歳になったとしても、新しい細胞を作り出すことができれば若いのです。
わかりやすい例を挙げると、今の癌治療で化学療法をやると、癌細胞が死にますが、体内のステムセルも一掃されてしまいます。そのために化学療法を続けると、癌は小さくなるのに、人体はなかなか回復できないという矛盾が起こります。
この抗癌剤治療の矛盾を解消する努力がいろいろありますが、その一つが、ステムセルを人工的に作ろうとする研究です。人工ステムセルを作って人体に入れようとすることが夢の治療のように医療業界で期待されています。ところが、夢のアイディアのように思われている人工的に増量したステムセルが、体内で必ず正常な細胞になるとは限らないのです。急に入れた人工ステムセルが炎症の原因になったり、拒否反応が起きたり、時には癌化することもあります。
癌の化学療法は癌を素早く縮小させるので多用されます。しかし、癌が小さくなっても、やればやるだけ回復力が衰える、この矛盾を解消しようと人工的に培養したステムセルを注入しても効果が遅い、この現状に対して、さらなる研究が必要です。
人は呼吸するだけでも、細胞を傷つける活性酸素が出てきます。呼吸という生命を支える活動の陰に、活性酸素という毒が発生します。その毒性を除去することが必要です。
呼吸をすることは、生きていくことの基本です、ところが、その呼吸をしているだけでも活性酸素という細胞を傷つける反応が起こります。若い時は、運動をして激しい呼吸をする刺激で身体が鍛えられますが、身体が弱い人は、激しい呼吸に耐えられません。
健康を維持してきた人でも、酸素を取り入れて呼吸する限り、活性酸素が生じて細胞を傷つけ、老化の大きな原因になります。老化が避けられないのです。
これに対しても、医学産業は、人工的なステムセルを打ち込むとか、人工臓器を作って取り替えるという新しい方向で対処しようとしています。
たぶん医療産業が望んでいる方向で寿命の延長ができるでしょう。患者もその成果に向き合うべきです。
しかし、ここに大きな疑問が生じます。
人間は自分自身の中に多くのステムセルがある。新しい細胞を作り出す能力もあるのに、その能力はどこに行ったのか。それをどう考えたら良いのか?自分自身のステムセルを活発にできないものか。
私たち自身が、問題を先延ばしにせずに、自分自身の生活パターンを見直す努力が必要です。生活習慣が乱れたままで病気と診断されるまで放置して、薬を飲んで待つ、この態度をなんとかできないものか?
大事なことは、自分自身に向き合って生活習慣を改めること、
もう一つは、自然な方法で自己治癒力を強化する努力、この二つで、自分の持って生まれた治癒力が高められるのです。
そこにヒントになる現象がありました。
私が作るコーヒー抗酸化エキスを飲んだ人は、髪の毛、爪、皮膚の再生が、自分で気がつくほどに早くなると言う現象が生じます。ケガで大きな傷ができても傷が早く塞がって再生します。エリマトーデス膠原病で皮膚が割れて炎症がある人でも皮膚の炎症が止まって回復しました。花粉症で鼻炎になやんでいた人も回復しました。抗がん剤治療でふらふらになっていた人もなんでもないかのように元気になるのです。
抗酸化作用がどのように作用して効果があるのかまだ分かっていないのですが、これまでの経験から、抗酸化作用が細胞の炎症を止めるのではないかという予測ができます。
抗酸化作用とは、活性酸素やウィルス、バクテリアで起こる毒性に対して、身代わりとなって自分を犠牲にする作用のことです。抗酸化作用を有する成分は、自分を犠牲にして、人間の身体を守ります。
これらの成分は、身近にある食品から得られるのです。
さらに、抗酸化作用が体内ステムセルを活性化する働きがあるという示唆が出ています。
抗酸化作用にどう言う作用があるかについて実例が、まだ少なすぎますが、人間は栄養と抗酸化能力で細胞の健康を維持できるのです。
細胞の元をこわすことは簡単です。でも細胞を再生するのが難しいのです。
その人間本来の再生能力を維持するために、抗酸化作用とは何かの理解が必要になってきます。
<その三:抗酸化作用 に続く>